法律相談BOX−質問箱−
既存不適格建物についての建物明渡し請求は認められますか?
私は,テナントビルを賃借して料理店を40年近く経営しています。
今般,オーナーの方から,テナントビルは既存不適格の建物なので,耐震性が弱いため取り壊したいから,建物から退去してくれと言われました。
私は,退去しなければならないのでしょうか?
今般,オーナーの方から,テナントビルは既存不適格の建物なので,耐震性が弱いため取り壊したいから,建物から退去してくれと言われました。
私は,退去しなければならないのでしょうか?
単に既存不適格建物というだけでは退去を求めるのは難しいのですが,建物を再築計画や立退料を考慮して立ち退きが認められる可能性はあります。
既 存不適格建物とは
既存不適格建物というのは,建築基準法に違反している建築物ではあるが,建築基準法および施行令等が施行された時点において,すでに存在していた建築物のことで,違法建築とはされていません。
このように,事実上違法な建築物であっても,法律的には違法でない建築物のことを「既存不適格建築物」と呼びます。
このような既存不適格建物は,耐震構造に問題があります。
正当理由があるか
そして,既存不適格建物について,耐震診断の結果,震度6程度の地震で倒壊する危険性がある建物である場合に,賃貸借契約の更新を拒絶する「正当理由」になるでしょうか。前提として,建物賃貸借における更新拒絶は,法律上は,「正当理由」がなければ認められません。
そして,正当理由は,
@建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情
A建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物の現況
B建物の賃貸人が建物の明渡の条件としてまたは建物の明け渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申し出をした場合に,その申し出の内容
等を考慮して決められます。
しかしながら,正当理由にあたって,@及びBは同程度の重みで判断されるものではなくて,@を主たる要素として,A,Bは副次的な要素と考えられます。
特にBの立退料の支払いは,それ自体が正当理由を裏付ける事実となるものではなくて,他の正当事由を基礎づける事実があることを,前提に,当事者の間の利害の調整機能としての補完的な役割となります(同趣旨の判例に,東京地裁平成25年12月24日判決)。
そして,既存不適格建物というのは,上記のAの事情と言えます。ですから,賃貸人が建物を取り壊して使用するという@の事情が強いのでなければ,余程の事情がなければAの事情だけでは,明け渡し請求が認められるのは難しいと思われます。
今すぐ取り壊さなければ,倒壊してしまうというほどの事情がなければ,いけないことになります。
上記の判例でのケースでは,賃貸人は建物取り壊しの後に具体的な建築計画があるわけではなく,駐車場として使用する程度の目的だったので,上記@の「建物の使用を必要とする事情」があまりにも弱いと判断されたものと思われます。
明渡請求を認めた判例
なお,賃貸人が分譲用マンションの建築を計画している場合には,建物明渡の必要性が高いとして,立退料を補完理由として,建物の明け渡しが認められた事例もあります。(東京地裁平成25年1月25日判決)この判例では,耐震性に問題のある建物を取り壊し,新たに土地の上に建物を建築しようとするのは不合理な行動とは言えないとしています。そして,分譲マンションを建築する具体的な計画があり,この計画が立地条件・周辺環境・用途規制から合理的であることを,明渡請求の理由のひとつにあげています。
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