法律相談BOX−質問箱−
違法な仮処分による損害賠償
私が所有している不動産について争いがあり,相手方が不動産の贈与を受けたとして仮処分を申請しました。
しかしながら,裁判の結果,相手の主張は認められませんでした。
仮処分をされたことの損害が認められるでしょうか。
しかしながら,裁判の結果,相手の主張は認められませんでした。
仮処分をされたことの損害が認められるでしょうか。
仮処分の申請者に過失がある場合には損害賠償が認められることがあります。
仮 処分とは?
仮処分は,裁判の前に,金銭債権以外の権利をあらかじめ保全するために,民事保全法に基づき裁判所が決定する暫定的な処置です。
仮処分には,@係争物に関する仮処分,A仮の地位を定める仮処分があります。
係争物に関する仮処分は,裁判前に物件の現状が変更されるのを阻止するために,現状維持を命ずる仮処分です。
たとえば,不動産についての訴訟を提起する時に,訴訟の間に,不動産の所有者や占有者が変わってしまうと,判決を得ても,強制執行時には別人が所有・占有しているということで,強制執行ができなくなってしまいます。
そうすると,裁判をするのが無意味になってしまうので,現状を固定することで,裁判の相手を確定するために,仮処分をする必要があります。
不動産の処分を禁止するための処分禁止の仮処分,不動産の占有の移転を禁止するための占有移転禁止の仮処分等です。
仮の地位を定める仮処分とは,争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避ける為に認められるものです。
たとえば,解雇無効を争っている場合に,長期にわたる裁判をしていては,その間の給料がもらえず生活費にことかくことになってしまいます。
そこで,賃金の仮払いの仮処分で,その間の賃金を支払ってもらうことが可能になります。
かように,仮処分は,裁判をまたずに行われる処分なので,場合によっては裁判の結果主張が認められないこともありえます。
その場合には,仮処分を申請したものは損害賠償責任を負うのでしょうか。
違 法な仮処分の賠償
仮処分の後の裁判(本案訴訟といいます。)で,仮処分申請者が敗訴した場合には,特段の事情がない限り,仮処分申請者の過失が推定されるため,不法行為が認定されることも多くあります。通常は,本案訴訟の応訴のためにかかった弁護士費用が損害と認定されますが,場合によってはそれ以外の損害が認められることがあります。
例えば,大阪高裁平成11年6月25日判決は,不動産の処分禁止の仮処分を行ったが敗訴したという事例で,仮処分の間の地価の下落についての賠償を認めました。当時においては,地価の下落は公知の事実として2億を超える損害賠償を認めました。
また,東京高裁平成11年8月18日判決は,不動産競売手続停止の仮処分について,後の本案訴訟で敗訴した場合に,配当が受けられなかった期間の遅延損害金として4億円を超える損害を認めました。
このように仮処分は,自らの主張にのみ基づいて一方的に出されるものなので,後に敗訴判決を受けないように,慎重に行う必要があります。
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