法律相談BOX−質問箱−
メールの送付が名誉毀損となる場合がありますか?
私の知人が,私の名誉を毀損するような内容のメールを私ほか数名に送ってきております。ただ,そのメールは不特定多数に配信されたものではなく,特定の数人に配信されただけです。
このように,メールを数人に送信しただけでは,名誉毀損にならないのでしょうか?
このように,メールを数人に送信しただけでは,名誉毀損にならないのでしょうか?
メールの送信が少数になされた場合であっても,ほかに伝播する可能性がある状況では名誉毀損となります。
名 誉毀損における伝播性
名誉毀損は,公然性が要件とされています(質問25参照)。 そして,公然性があるとされるためには,不特定若しくは多数の人に対し事実の摘示若しくは意見ないし論評の表明がされたことが必要とされています。
もっとも,判例上,特定かつ少数の人に対し事実の摘示若しくは意見ないし論評の表明がされた場合であっても,不特定又は多数の人に対する「伝播可能性」が認められる場合には,公然性を満たすとされています。
インターネットの掲示板や,メルマガ,メーリングリスト等は,不特定人あるいは特定多数人が閲覧することが前提ですので,これらにより名誉が毀損されれば,容易に「公然性」が認められると思われます。
では,メールというあくまでも1対1の連絡手段の場合には,どうでしょうか?
メ ール送信での名誉毀損を認めた判例
メールでの名誉毀損事例として,東京高裁平成17年4月20日判決があります。この判決は,「やる気がないなら,会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても,会社にとっても損失そのものです。」「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の実績を挙げますよ。……これ以上,当SCに迷惑をかけないで下さい。」等の記載のメールが,職場の上司から本人および十数名に送付されたというのです。
判例は,人の気持ちを逆撫でする侮辱的言辞と受け取られても仕方のない記載などの他の部分ともあいまって,名誉感情をいたずらに毀損するものであることは明らかであり,上記送信目的が正当であったとしても,その表現において許容限度を超え,著しく相当性を欠くものであって,不法行為を構成するとしています。
かように社内のメールであっても,数十人に送信したメールでも公然性を認めたものです。
判例は,特に伝播性があることに触れていませんので,数十人への送付ということで公然性を認めたものと思われます。
では,メールが数人に対するものであれば,違法とはならないのでしょうか。
この点,メールは手紙等と違って転送が容易であるという点に特徴があります。文書であれば,それを持参するなりして人に公表するということが必要ですが,メールの場合には,「転送」によって瞬時に他人の閲覧に供することが可能になります。
また,公務員等守秘義務がある場合でなければ,重大な関心のある事柄については,転送がされていくことは容易に想像ができます。
ですから,メールの場合には,数人への送付であっても伝播性があるとされる可能性が高いと思われるので,注意が必要です。
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